オーガニックコスメとの付き合い方

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オーガニックの方がリスクが高い?

柑橘系の香りがすると、なんとなくさっぱりとした気分になって、お肌も引き締まるような感じがしませんか。でも、こういった「食品」を肌に塗る行為は、実は皮膚炎や食物アレルギーのきっかけになることもあるんです。その理由は、大きく2つに分けられます。

1つは、日本ではオーガニックコスメの基準が曖昧なこと。もう1つは、オーガニックコスメのほうが、肌トラブルのリスクが高いことです。

日本には「オーガニック」の基準がない!

まず1つめの理由として、日本には、化粧品に関するオーガニックの認定基準がありません。

オーガニックという言葉は、有機栽培で育てたものに対して使われます。オーガニックコスメは、農薬や化学肥料を使わずに育てられた植物から作られた化粧品という意味なんですね。

海外では、厳しいオーガニック認証基準が設けられています。COSMEBIO(コスメビオ)、ECOCERT(エコサート)、ICEA(イチェア)、ドイツ化粧品医薬品商工連盟(BDIH)、米国農務省(USDA)といった公的な認証機関の検査員が農場や工場へ行って基準に適合しているかをチェックし、合格した者だけが「オーガニック」を名乗れるのです。基準は化粧品の成分だけではなく、生分解性の容器が使われているか、どのように流通させているかも含めてチェックされることがあります。

ですが、日本ではそれほど厳しい基準をクリアしなくても「オーガニック」を名乗ることができます。

日本には、こういった一見健康によさそうな表現の基準が甘いことがあります。食品の中では、エキストラバージンオリーブオイルがそうです。海外では「エキストラバージンオリーブオイル」と名乗るには厳しい国際規格をクリアしなければいけないのですが、日本では国際基準を採用しておらず、どんなオリーブオイルも「エキストラバージン」を名乗れてしまいます。

もちろん、しっかりと認定を受けたり、基準に適合しうる製品を販売しているメーカーもあります。けれど、そういう製品とそうでない製品が分かりづらいというのが現状です。

オーガニックは肌トラブルを招きやすい

2つ目は、食品由来成分を多く含むコスメは、そうでないコスメと比べて、肌トラブルを招くリスクが高いことです。例えば、みかん・グレープフルーツ・レモン・柚子などに代表される柑橘系や茶葉などは、よく化粧品に配合されていますよね。

でも、食物を肌に塗り続けると、アレルギーを発症したり、肌トラブルを誘発したりと、さまざまなリスクを招くことが分かっています。

食品に触れ続けても発症するアレルギー

ピュアな植物成分はとっても肌にやさしそうなイメージがあるのですが、実のところ、アレルギーの原因となるたんぱく質も含まれています。

こういう肌にやさしそうな化粧品は、肌がカサカサしてきている気がするといった、バリア機能が低下しているときに使いたくなるものです。けれど、ただでさえ肌が弱っている状態で、アレルギーの原因となる物質を含んだ植物エキスを塗り続けると、いずれアレルギーを発症してしまうかもしれないんです。

ピーナッツを食べない子どもがアレルギーになる理由

イギリスでは、子どもがピーナッツアレルギーになることが多くて、子どもにはできるだけピーナッツ製品をあげないようにしていたそうです。それでも、ピーナッツアレルギーの子どもが減ることはありませんでした。

しかも、子どものうちからピーナッツバターをたくさん食べている国の子どもよりも、ピーナッツを避けているはずのイギリスの子どものほうが、ピーナッツアレルギーを発症する割合が高かったのです。

直観に反するような、不可解な内容ですよね。

この謎が解決したのは2015年でした。そして、その原因として注目されたのは、当時のイギリスでは子どもの肌を保湿するのに使われていたとあるベビークリームだったのです。このベビークリームには、ピーナッツオイルが配合されていました。

口にはしなくても、肌に塗り続けるだけで食物アレルギーを発症する現象は、すでに明らかになっていました。

日本でも、植物由来の成分が配合された化粧品でアレルギーを起こしたという事例もあって、アナフィラキシーショックや呼吸困難に陥るほどの重症になる方もいました。

天然成分を使っていることは、お肌に塗り続けて良い効果を得られることと関係がないどころか、逆効果になってしまうケースもあるのです。

日光に当たるとかぶれる光毒性接触皮膚炎

また、特定の植物エキスが肌につき、その箇所に日光が当たることでかぶれる「光毒性接触皮膚炎」という症状があります。

レモンやニンジンなど、一部の果物や野菜の汁に含まれている「フロクマリン」という物質が皮膚につくと、そのエキスがついた部位は紫外線に敏感になってしまい、水ぶくれをともなうヤケドを起こすことがあるんです。皮膚が腫れたり、かぶれたり、水ぶくれができたりして、強い痛みを感じることも。

光毒性接触皮膚炎の原因物質として有名なのは、ベルガモットやグレープフルーツなどの柑橘系の精油や、これらの成分を含んだ化粧品や香水です。

自然派コスメのリスクとして特に有名なのは「マルガリータ皮膚炎」ではないでしょうか。マルガリータとは、テキーラベースに、ライムジュースとホワイトキュラソーを加える強めのカクテル。コップのふちに塩をつけるスノースタイルでいただくのが定番です。

海辺で飲みたくなる爽やかなカクテルですが、柑橘系を含むマルガリータを海辺で飲むと、光毒性接触皮膚炎になりやすいと言われています。

フロクマリンについて

特定の植物、特に柑橘系の果物にはフロクマリンと呼ばれる成分が含まれています。

フロクマリンは、皮膚の上についた状態で紫外線に当たると反応を起こし、皮膚を傷つけてしまうのです。どれくらい反応するのかについては個人差がありますが、一般的にはやけどのような症状が出ます。日光の下で、フロクマリンに触れそうな状況にいる場合には、特に注意しましょう。

お手製の精油入り化粧水も注意が必要

化粧水や精製水に精油をすこしだけ混ぜて使うという方法もよく見ます。

自分の好きな香りを取り入れることで、スキンケア時のテンションも上がっていいですよね。精油入りの化粧水を販売するという場合は話が別ですが、個人で楽しむ分には大きなリスクは小さめです。

けれど、精油を混ぜて使用するときにも、光毒性接触皮膚炎には十分に注意しなければいけません。精油入りの化粧水でお肌をケアした後に日光に当たってしまうと、肌トラブルが起きてしまう可能性はあります。

例えば、ベルガモットやグレープフルーツといった精油には、フロクマリンが含まれている可能性があります。レモングラスやメリッサなど、柑橘っぽい香りだけど光毒性がなさそうな精油もあります。また、精油の抽出方法によって、光毒性を持つものと持たないものに分かれます。精油の知識がなければ、これらを正確に判断するのは難しいでしょう。

精油でスキンケアを楽しみたいときのポイント

そうはいっても、精油入りのオイルなどはマッサージやエステなどでも使われているので、「お店で施術を受けたら、肌トラブルになる可能性があるの!?」と不安に思う方もいるかもしれません。でも安心してください。そういうお店で使われている精油は、たいていフロクマリンフリーの精油です。もし光毒性が気になるのであれば、お店で使われているような、フロクマリンフリーの精油を選ぶといいかもしれませんね。

また、光毒性のリスクが発生するのは、その成分が皮膚の上についていて、紫外線を浴びたときです。つまり、肌につけるだけでは、光毒性は問題にはならないわけです。もちろん、アレルギーのリスクには十分に注意する必要はありますが、ほんのちょっとの精油を楽しむ分には、危険性も低く、問題にはなりにくいでしょう。

なので、心置きなく精油を使ったスキンケアを楽しみたいという場合には、日光を浴びる心配のない夜に使うことで、肌トラブルを避けることができるかもしれません。

合成成分が肌に悪いとは限らない

天然成分や植物由来のコスメは、安全なもの、肌に優しいものだというイメージを抱きがちですが、実際にはそうとも限りません。

天然ということは、裏を返せば、何が含まれているか分からないということだからです。自然とよい成分を摂取していたと良い方に働くこともあれば、肌トラブルを誘発する成分を取ってしまっていたという悪い方に働くこともあるでしょう。

また、天然成分にも危険性の高いものがあります。触れるだけでかぶれてしまう「漆」はその典型でしょう。また、漢方でつかわれる「甘草」という生薬にステロイドホルモンに似た作用が認められているので、併用してはならない薬や成分があります。

もちろん、合成成分にも危険なものはあります。でも、何が入っているか正確に把握するのが難しい天然成分に対して、合成成分であればどんなものが入っているのかはっきりと分かります。そのため、肌に悪影響を与えかねない成分を使わないという観点で見るのであれば、むしろ合成成分のほうが安定した安全性が担保できる…という考え方もできるのです。

植物成分がすべていけないわけではなく、自分の肌に合うなら問題ありません。天然成分・合成成分はどちらにもリスクはあります。だからこそ、成分が天然かどうかにこだわりすぎず、自分の肌に合う化粧品を選ぶという視点が重要なのです。

もしトラブルが発生したらすぐに皮膚科へ!

危険性を考慮した範囲で、個人的に楽しむのであれば、精油を使って気軽に色々試してみるのもいいですね。でも、お肌に異常を感じたら、すぐに使用をやめましょう。肌トラブルが治らない場合は、書籍やインターネットなどで調べて自力で直そうとせず、すぐに皮膚科で見てもらいましょう。